ダンサー(バレエダンサー)の肉体

ダンサー(バレエダンサー)の肉体


・バレエダンサーの肉体は美しい


 肉体にかなりこだわりのある私は、今までいろんな人のあらゆる肉体を見てきた。そのたびにこの人はこんな体つきだ、とか、この人のここが素敵、ここが残念。この人絶対体脂肪少ない。とか、他人のからだをみるたびに毎回自己分析をしてしまう。その度に思うことは、ダンサーの肉体は美しい。その中でもとくにバレエダンサーの肉体というのは群を抜いて素敵だ。
 これは、自分がバレエをやっているからそう言っているのではなく、客観的に見て、そう思う。街を歩いていても、この人バレエをやっているな、と言うのは結構わかるし、全くバレエをやったことのない普通の人でも、きれいな人をみて、この人バレエとかやってそう…とか、バレエとまでは断定はできずとも、何か特別なことをやっているな、と思ったことはあると思う。
私も、よく他人に、「バレエをやっている」と言うと、だから姿勢がいいんだねと言われるし、「姿勢いいよね」と言われて、「バレエやってるので…」と答えると、「やっぱり!!」となることがある。
 なぜ、そんなに周りに気づかせることが出来るのか。別にその人の前で突然踊ったりする訳でもなく、髪だって普段はおだんごにしていない。バレエダンサーの肉体が美しいからと言って、普段裸でいるわけでもないし、レオタードだって着ていない。なのにどうしてバレエやってる人ってわかるんだろう…と言うかなぜ目立つんだろうか。
そこに隠されたものは、前の文章に出てきた「姿勢」なのだ。姿勢がいいとそれだけで目がいく。ついその人を見てしまう。そこで、この人姿勢がいいな、と言うことに気づく。どこをみて、姿勢がいいかと思わせているのかと言うと、胸から上、とくに肩と首だ。
 バレエダンサーは基礎のバーレッスンによって、肩と首は美しく鍛え上げられる。人は、他人を見るときまず最初に相手の顔を見ることが多いはず。脚を最初に見る、という人はあまりいないはずだ。顔を見ようとすれば、自然と首から肩にかけてのラインは目にとびこんでくる。そのときに、バレエダンサーをみて、姿勢がいい、とか、きれいだ、とか思ったりするのだ。
バレリーナのヘルスケア」と言う本を読んだら、こんなことも書いてあった。「ひきしまった体、ほっそりした脚と言うのは、エステやエアロビクス、水泳で得られるでしょう。でも、女性の誰もがあこがれる、美的でエレガントな体のなかで、バレエや舞踊でしか得られるないものがあります。細く長いくびと、なだらかな肩です。これだけは、水泳やエアロビクスで体脂肪率をどれほど減らそうとも、筋肉をきたえようとも、得られないものです。また、エステでくびのまわりをマッサージしてもらうのは爽快ですが、それで形がかわるものではありません。〜中略〜運動選手に多く見られる短いくびは、肩があがっているのではなく、肩やくびのまわりの筋肉がきたえあげられて筋肉が大きくなるのです。見方によればそれはそれなりに野性的で魅力的であるのですが、エレガントではありません。」
よく、バレエの先生にも、「首を長くしてー!」とか、「もっとなで肩に!」とか注意をうける。そして、「バレエにはテクニックももちろん大事だけれど、ここら辺の表現も大事」と、胸から上を指しながら言われることもある。
 やはりこの首から肩にかけての美しいラインはバレエ特有のものと言える。たしかにスポーツ選手は、肩まわりの筋肉が鍛えられているため、すごく盛り上がって見え、首が短く見える。どことなく猫背に見えてしまうときもある。
バレエをやっている人の中には、すごく華奢な人もいれば私のようながたいのしっかりした人もいる。けれど、骨格に関係なく、レッスンによって肩と首、これは間違いなくみんなきれいだ。痩せている人はもちろんのことだけれど多少太っている人でも胸から上はきれいで、前から見れば鎖骨が目立つし、横から見れば、首がまっすぐたっていて、後ろから見れば、肩と肩胛骨がおりていて、首が長くみえる。斜めの角度から見ればうなじ美人にもなれる。
もちろんダンサーの肉体が美しいのはこれだけではない。肩から首はあくまでもパッと見てとときに一番目立つところなのである。胸から下だって、もちろん美しい。
 バレエを踊るには、アライメント(体の中心となる軸)がしっかりしていないといけない。常に体の芯がまっすぐでないとだめなのである。そのためには、ボディ、いわゆる上半身がまっすぐ引きあがっていないとなのだ。背中をまっすぐに、そして胸も反り返らないように、猫背はもちろん、逆のそりすぎもいけない。前にも後ろにも、右か左どちらかにも、上体がぶれないように、体を引き上げて踊るようにするため、肉体は引き締まり、まっすぐなからだになる。
脚はどうだろうか…脚のかたち、筋肉のつき方にはかなり個人差があるが、ダンサーの脚がすらっとまっすぐしなやかに伸びているのは、これもまたバレエ特有の動き、クラシックバレエをやるにはとても重要なこと、アン・ドゥオールをしなければならないからである。
 アン・ドゥオールというのは、ターン・アウト、つまり外に開くことで、バレエダンサーは踊るときに、脚を外に開いている、アン・ドゥオールをしている。アン・ドゥオールをしっかりおこなうには、股関節のストレッチ、内ももの筋肉がかなり重要になってくる。
 股関節をしっかりストレッチするということは、すごくいいことで、前にテレビを見ていたら、ダイエットにいい相撲のポーズがある、と言っていた。私はその時点でピンときた。それはバレエの二番ポジションのグランプリエだ。これはどういう動きかと言うと、足を肩幅より広くとり、つま先と膝をなるべく外に向けて立つ。そのまままっすぐ下へ膝を曲げながら腰を落とす、というバレエのレッスンのほんとにはじめにやるものなのだけど、これがまっ先に私の頭に浮かんだ。相撲でも土俵入りのときに、バレエの二番ポジションのグランプリエと同じ構えをしてる、と思ったのである。
 正解は、私の考えた通りだった。これは相撲では「腰割り」と言うらしい。股割りは有名だけど、腰割と言う言葉は初めて聞いたし、構えにもそんな名前がついていることにも驚いた。
そして、この腰割りの格好が、股関節がストレッチされ、血行が良くなり、リンパに刺激を与え、新陳代謝が良くなると言うのだ。テレビで腰割りを視聴者にすすめていた。
 これを、基礎としておこなうクラシックバレエは、やっぱり理にかなっていることに気づかされる。そして、グランプリエで大事なのは、膝とつま先が外を向いていて、同じ方向を向いていること、足の小指側が浮かないこと、おしりが突き出ないこと。みているほうからすれば、シンプルな動きなのに、すごく注文が多い。これをやろうとすると、脚の内側の筋肉を使うし、しっかりストレッチもされてなければいけない。
ももの内側は、日常ではほとんど使われることはない。だからすごくたるみやい。アン・ドゥオールに欠かせないももの内側の筋肉を使うことにより、バレエダンサーの脚はすらっと引き締まる。バレエではももの前側の筋肉を使うことはほとんどないため、前からみたときに脚が太くみえることもない。それで、バレエダンサーの脚は、まっすぐしなやかなラインになるのだ。
 これで、バレエダンサーの肉体は全体的に美しくなることが出来る。
 しかし、間違ったレッスンをすれば、逆に変な筋肉のつきかたもしてしまう場合もある。それに、レッスンのときだけ頑張れば言い訳ではない。普段から、姿勢、歩き方、しぐさ一つ一つに気を配らなければ、バレエダンサーのからだはつくれない。
逆に言えば、普通の人でも、日常の意識や、多少のトレーニングすることや努力によって、バレエダンサーのように踊ることは出来なくても、姿勢が良くなったり、引き締まった美しいからだに近づけることが出来るとも言える。何も、バレエダンサーのからだだけが美しいと言うのではなく、バレエのレッスンは、美しいからだをつくるためにとてもいいことだと言いたい。